ニュースリリース

11.08.10

中国レポート

中国における日本の環境関連ビジネス展開について
2011.08.08 MICG 大上二三雄

<中国ビジネスの現況と特徴>
1.成長の副作用としてのインフレと不動産バブルへの対応
(ア) 未だ経済成長が続くも、物価高騰が庶民を苦しめる。現在、公表のインフレ率は年率6%程度だが、生活者は食料品が倍になったとコメントする。
(イ) 日本のバブル崩壊に学習し、リーマンショック直後の超緩和から、利上げ引き締めへの転換は早いタイミングで行われた。また、急激な引き締めや全国的な取引規制などは避けている。
(ウ) 政府は国民の不満をおそれ食料品やガソリン、エネルギーなどのコストを押さえる努力を継続中も持続可能性は疑問(公的資金による穴埋めがどこまで続く?)。国民は楽観的も先行きは不透明

2.技術レベルと輸出競争力
(ア) 鉄道事故は一時的現象。三井物産担当者は、「中国鉄道技術レベルは急速に向上し、製品の品質は日本と同等か一部は上回る。今後は中国製品の第三国供給に力を入れる。」と事故後においてもコメント。
(イ) ハイテク・エレクトロニクスの現場からも同様の声を聞く。結局は、大きな生産・需要が有る現場は、安くて良いものを買う。そこが一番強くなる、ということ。
(ウ) こういった場所では、「普通で良いもの」は徐々に競争力を失う。「特徴が有る良いもの」、例えばAudiやiPhone等でないと、競争力を維持できない。

3.ビジネスと官僚支配
(ア) 共産党による、中央・地方政府と大企業や重要企業の管理が徹底。全国各地に、高級幹部とファミリーの利権グループが存在。有能な者や金を持つ者を使い、ビジネスを展開する。賄賂は罪だが、権力を利用したビジネスは「当然」との風潮。
(イ) 外資は中国人社員を活用して、官僚との関係をメンテナンスする。日本企業はその辺が上手でなく、ODA同様頑なにコンプライアンスを守る印象。
(ウ) 競争力が有る製品やサービスには、官僚との関係は不要。

4.官僚支配の論理と現場の意思決定
(ア) 現場の責任者は、①自分のKPIに沿って業績が上がり、②自己及びグループの利益となり、③国の政策にも沿った意志決定を行う傾向がある。地元の為とか、国の為といった、公の利益を考慮する者は少ない。
(イ) 地方政府官僚のKPIは、通常GDP成長率。他には、CO2削減や設備近代化率xx%等という者もいる。狙い目はそこら辺りか。
(ウ) 官僚の持つ最大の利権かつGDP成長率の源泉は不動産開発である。エコシティやエコ工業団地なるものにおいて、必ずしも「エコ」に強い思い入れが有る訳ではない。

<日本の環境関連ビジネスの展開について>
1.エコシティ:国策としての環境対策と現場の動き
(ア) エコシティのベースは不動産開発との前提を置いた上で、エコシティの技術のみならず、その開発から販売までの付加価値向上+日本企業・資本の導入に関して、如何に協力出来るかという観点が重要。
(イ) 国策としての環境対策を行う、国家中枢と関係者につながるパイプが重要。そのような政策担当者の業績を作ることへ貢献する、という観点が重要。中国においては、個人への価値が国家への価値に勝る事を理解すべき。
(ウ) 持続的かつ継続的なRM(リレーションシップ・マネジメント)が重要。この為にも官民連携は推進されるべき。また、中国人人材の活用についても同様。NRIの中国人チームは歴史的に採用を重ねて来た優秀なメンバーで、この分野で各所に食い込んでいると聞くのは好例。

2.産業の環境対策技術
(ア) 経済性や規制基準値がドライブするのは当然であるが、日本と中国においてその前提が大きく異なることに留意が必要(エネルギーコストが安く規制基準値が甘い中国では、日本より省エネ・環境技術の損益分岐点が遥かに高い)。
(イ) 現場ニーズへの適合が鍵。日本を理解した中国人社員の確保が重要。

3.ODAとJICA
(ア) 2001年の911テロ後において、国連の対外援助ミレニアムゴールをまともに追いかけているのは、先進国中日本だけとの身内の評価。ブロック化と資源・市場獲得競争の世界において、アンタイドの援助は幻想化。
(イ) フェアプロセスには時間が掛かり、為に事業が有望で国益にかなう案件は他国にさらわれ、残された美味しくない案件の援助は日本、受注は中国、韓国企業という構図。
(ウ) 外務省の経済リテラシー向上と併せ、JICA改革は取り組むべき重要テーマ。理事長に民間出身者を充てる人事が鍵。

<その他日本への示唆>
1.長期的視点に立った産業競争力
(ア) 長期的視点に立てば、ここ当分は大規模購買市場であり続ける中国の企業立地における優位性は、揺るがない。日本企業は製造移転だけではなく、R&D迄含めて移転して「現地化」しない限り、普及製品(良い普通のもの)市場においては勝ち目が無い。
(イ) 日本企業は、競争力を持ち日本生産を維持するためには、付加価値の高い製品(良い特別なもの:例えばiPhoneやAudi)を産み出さなくてはならない。
(ウ) 上記の観点から、FTAや相互交流はより一層促進されなければ、ならない。
2.官民連携の復活と民民連携の促進
(ア) 日本の競争力の源泉を国民の性質に求めるとすれば、欧米人のみならず中国人に比べ、個人の利害のみならず所属する組織や帰属する国家の利害を考え、かつ行動するところ。自ら担当外の事を、所属する組織の担当者に「つなぐ」行為を日常的かつ積極的に行うのは、知る限り日本人だけ。
(イ) このような美質を有効に活用する為には、官民各組織間の連携をより一層図っていく必要がある。そのための交流機会を増やす為にも、交際費や会議費の課税特例や官民飲食会合の積極的な促進施策が、必要であろう。

日中環境ビジネス交流の在り方.pdf

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